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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 そして、この1週間でリツたちの避難所となった部屋の扉が、ガチャリと開かれた。


「あっ、こらお前ら。ベッドの上で飯食うなっ! 布団汚れんだろうが!」


 保健室に入ってきたのは、養護教諭の遠藤先生である。


「まあまあ遠藤ちゃん、細かいことは気にしない気にしない」


 ベッドの上で山になった食料から、佐山はおにぎりを手にとった。


「たく。毎日毎日居座りやがって、ここはテメエらの部屋じゃねんだぞクソガキ」


 保健室の先生と言ったら、リツには女性というイメージしかなかったが、霧金は生徒も男なら教師もすべて男である。


「そんなっ……じゃあセンセーは、全校生徒から狙われてるボクたちを追い出そうって言うんですか!
 ボクらが病院送りになろうが知ったこっちゃねえと!
 ヒドい! ヒドすぎる!」

「あーうるせーうるせー。
 いいからベッドから下りろ」

「えぇ。だってここ椅子すげー座り心地悪んだよ」

「てめぇ、マジで追ん出すぞ」


 見た目は30代半ば。
 髪はボサボサで無精髭まで生やした清潔感の欠片もない男だが、これで保健室の先生である。

 しかもウン十年前は、どこかの暴走族で総長をやっていたらしい。

 その伝説は今も脈々と語り草になっているらしく、保健室にはその手の連中は寄ってこない。

 リツたちにとっては、この上ない安全地帯だった。

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