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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

「んで、綾野は大丈夫なのか?」

「ん?」


 リツはハムサンドをくわえながら、情報誌から視線を上げた。


「ケガとかしてねえのかって」

「してるよ、ほら」


 リツはギプスを巻かれた右腕を上げた。


「アホ、それは知ってるっつの。
 じゃなくて、カギ狙ってくる連中からケガさせられなかったか聞いてんだよ」


 遠藤は、これでいて意外と面倒見のいい人だった。

 噂で聞いていたのか、リツと佐山が初めて保健室に来たときから事情を知っていて、いろいろと気にかけてくれている。


「うん、大丈夫。俺ら逃げ回ってるだけだしさ」

「そうか、ならいい」


 遠藤は机に向かって、何やら書類にペンを走らせながらそう言った。

 遠藤の白衣姿を見やり、情報誌に目を落とすと、ポケットの中でケータイが震えた。

 リツはため息をついた。

 ケータイを取り出し、着信を知らせるバイブレーションを停止させて、リツはケータイをポケットに戻した。

 毎日一度は必ずかかってくるこの電話。

 それがかかってくると、リツはいつもの表情を消す。

 底抜けに明るい顔が、急に影を作る。

 それが、佐山には気になってしかたなかった。

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