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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

「なあ、毎日かかってくるけど、出なくていいのか?」

「いいんだよ。どうせ大した用じゃない」


 リツはいつもそう言う。


「大した用じゃないのに毎日かけてくるのか?」


 今回佐山は少ししつこく聞いてみた。


「そういう人なんだよ」


 リツは少し不機嫌を露わにする。

 ――珍しい。

 リツは怒ったり、弱音を吐いたりなど、負の感情はあまり表に出さない。

 リツの生い立ちをほんの少し聞いたが、佐山から思えばグレたってまったくおかしくない家庭事情だった。

 それなのにリツは、なんてことないようにあっさり生きている。

 だから電話を切るときのリツの表情を見ると、急に怖くなる。

 反射的に、佐山は深く踏み込まないようにしていたが、こうも毎日だと、気になってしかたなかった。


「誰なの? その相手」


 佐山は残りのおにぎりを口に目一杯頬張り、次のおにぎりに手をつけた。

 リツもハムサンドにかぶりつく。

 表情はいつものリツに戻っていた。


「兄貴」

「兄貴? 兄弟いたんだな」

「ああ、血は繋がってないけどな」

「うっ」


 佐山の喉に、おにぎりが少し詰まった。

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