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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 




   ◆ ◆




 そして放課後。

 リツは屋上へ向かった。

 屋上への呼び出しなんていかにも不良っぽいが、リツは階段を上っていて思った。

 今時屋上なんか開放されているのだろうか。

 こんな学校で開放していたら、それこそタイマンのリングとかで使われそうだ。

 悪の巣窟になるのが目に見えている屋上を、開放する利点などなさそうなものだが、屋上の扉を前に、リツは納得した。

 扉が壊されているのだ。
 カギの部分だけバキバキに。

 直しても、費用の無駄なのだろう。

 リツはくしゃくしゃのノブに手をかけて扉を開けた。

 そこには柵にもたれかかって煙草を吹かす、鴇津の姿があった。

 リツは軽快な足取りで、鴇津の隣まで歩み寄る。


「どうも、何か用ですか?」


 リツは、躊躇もなく鴇津の隣に腰を下ろした。

 すると鴇津の瞳が、一瞬広がった。

 鴇津は紫鳳の幹部という立ち位置である。

 ふつうの神経を持っている奴は、恐れ多くてこんな軽率な行動はできない。

 鴇津は空目掛けて煙を吐き出し、耳から伸びていたイヤホンを外した。


「噂になってる。
 今度の紫鳳の頭候補は腰抜けだってな」


 鴇津は無表情に言った。

 この1週間、リツは誰ひとりとしてケンカを買っていない。

 おかげで、リツはケンカを売られても逃げるだけの腰抜けという噂が流れていた。

 『時雨』でリツの腕っぷしを目の当たりにした鴇津からすれば、リツの行動は理解できなかった。

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