テキストサイズ

血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

「テメエにはわかんねえよ!
 いっつもいっつも、良いとこだけテメエは持ってく。

 いつも一緒にいて、ケンカだってずっと一緒にしてきたのに、明日斗くんに一番信用されてたのは俺じゃない、お前だ。

 カギだって……、俺じゃなくてお前に預けた。

 紫鳳にだって、俺は入れなかったのに、テメエはカギ持ったまましれっと入ってんじゃねえか」


 中林の握った拳が、ぎりぎりと震えていた。


「弱えくせに、ナンにもしねえくせに、テメエはいつも守られてやがる。

 そのくせ、その有り難みも知らねえでへらへらしてやがる。

 俺ぁな、そのツラが昔っから大キレエなんだよ!」


 リツはただ、黙って聞いていた。

 澱みのないリツの瞳。
 深い漆黒の瞳に、中林は息を呑んだ。

 それは中林の恐怖を掻き立てた。

 そして恐怖は、人の攻撃本能を呼び覚ます。


「元はと言えば明日斗くんが悪いんだ!
 ひとりで勝手に死んで、俺らのことなんて何にも考えちゃいない。

 だったら少しぐらい、俺らのために明日斗くんを使ったっていいじゃねえか!」


 リツは、中林の顔面を思い切りぶん殴っていた。

 倒れ込む中林に跨がり、リツは何発も拳を打ち下ろす。

 しかし中林はノーガードで顔を殴られ続けた。

 中林は、一発目ですでに意識を飛ばしていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ