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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

「このっ――、テメエらヤっちまえ!」


 中林しか見えていないリツは、簡単に拳をもらう。

 廊下を転がり、一瞬で囲まれた。
 何発も蹴りを入れられるが、不思議なことに痛みはない。

 あるのは、抑えられない衝動のみ。

 リツは無差別に目の邪魔者を殴り倒していった。

 誰を殴って、誰に殴られたのか。
 何も覚えていない。

 気づけば、邪魔する者はいなくなった。

 止める人間がいなくなり、リツはまっすぐに中林の元へ歩み寄る。

 中林は意識を取り戻していた。

 しかし足腰は立たなくなり、逃げることもできなくなっていた。


「ちょっ、まて! まてリツ! わかった! 俺が悪かったよ!
 だから――ッ!!」


 情など無くなってしまったかのように、リツは容赦なく中林のアゴを蹴り上げた。

 再び意識が朦朧としだした中林に、リツは馬乗りになる。

 後は感情もなく、衝動のままに拳を叩き込んでいった。


「おい、リツ!
 やめろって。リツ!」


 リツは肩を抱かれ、中林から引き離された。

 目の前の男を見上げると、目がしっかりと開かれ、少し息を荒げた鴇津凌一だった。

 表情の崩れた鴇津を見て、リツははっと我に返る。

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