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血とキズナ

第1章 約束のカギ

「いや、俺の友だちが借りたから、返したいだけなんだけど」

「借りたって……え、いや、ちょっと待て、意味が……。えぇ……」


 佐山は腕を組み首をひねっている。
 その狼狽ぶりに、リツもさすがに戸惑った。


「なんだよ。これ、そんなヤバいもんなのか?」

「わっバカ……ッ、むやみに見せびらかすなっ!!」


 また手を押さえ込まれた。
 そしてきょろきょろと様子を窺う。

 リツたちを気にしている奴らはいないようだが、すぐ近くの席にはトランプで博打をうっている奴らや、バカ騒ぎをしている奴らと、とにかく人目は多い。


「ちょっとこっち!」

「え、おいっ」


 リツは腕を掴まれて、教室の外へ連れ出された。


「おい、もう入学式始まるぞ」

「バカ、今ぁそれどこじゃねえっつうの!」

「……入学式も、けっこう大事だぜ?」

「いいんだよ、ここの入学式なんて、どうせまともなもんじゃないんだから」


 頭の中に体育館が浮かんだ。
 きれいに並べられた新入生席と、保護者席。

 そこに座る俺と――。


 そこまで浮かんで、霞がかった。

 そして暴れる新入生たちと、ガラガラの保護者席が容易に想像できた。


 リツは佐山に抗うのをやめて、素直に佐山に引っ張られていった。

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