血とキズナ
第1章 約束のカギ
◆ ◆
「で、なんでトイレ」
「だって、他に二人きりになれるとこなんてあるか?」
佐山につれ込まれたのはトイレの個室。
不良学校の、とてもきれいとは言い難いトイレの個室。
しかも和式便器を挟んで、身長170越えの男二人が向かい合うというのは、
「気色悪い」
「だから、しかたねーだろ。他にねえんだからよ。
――まあ、オンナのコとだったら興奮するシチュエーションだけどな」
にやけ出す佐山に、リツはため息をつく。
「俺なら、もっと清潔なトイレ選ぶね。
少なくとも洋式トイレにするよ」
「そりゃちげーねえ。
ってまあ、それは置いといてだね――、さっきのカギ、もっかい見してくれよ」
「ああ。――落とすなよ」
「わあってるよ、恐ろしいこと言うな」
何が恐ろしいのかはわからないが、リツは差し出された佐山の手にカギを渡す。
佐山はそのカギを、慎重な手つきで鑑定する。
そして判定を下した。
「間違いねえよ。
これ“柴鳳”のカギだ」
「シホウ?」
「お前知らねえの? 柴鳳はここ一帯でいちばんデカい暴走族チームだよ。
メンバーは100人を超えてて、霧金にくるヤンキーの半数は柴鳳のメンバーか入族希望者だ」
相変わらずよく知っている。
リツは感心しながら聞いていた。