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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 周りを見れば、8人の男が倒れている。

 廊下にはそこら中に血が飛んで、軽い地獄絵図のようになっていた。

 自分の格好を見れば、制服は血でベトベト。
 拳はビリビリと痛くなってきた。

 頭を下げればドロッと血が流れ、床にポタポタと垂れた。

 見れば血の付いたモップが転がっていた。
 自分がこれで殴ったのか、または殴られたのかはわからなかった。


「やりすぎだ。殺すつもりか」


 見れば中林の顔は腫れ上がって、原形をとどめていなかった。

 足の力が抜け、リツは廊下に座り込んだ。

 茫然とするリツを、鴇津は観察するように眺めた。

 頭から血を垂らした顔。

 血に染まる制服。

 そして皮膚の擦り切れた拳。

 これがさっきまでへらへらと能天気に笑っていた男の姿だろうか。


 鴇津は廊下の影で、一部始終を傍観していた。

 助けるつもりなどは毛頭なく、この状況をどうするのか、気になっただけだった。

 だが、予想もしていなかった方向に転がり、放っておいたら本当に殺してしまいそうだったので、鴇津は少し焦った。


 ケンカが嫌いで、逃げ回ってばかりだった奴が、まさかこれほど容赦なく拳を振るうとは思わなかった。

 あまりの印象の違いに鴇津のほうも、状況をあまり理解できていなかった。

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