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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 明日斗を悪く言われたことに、そこまでムカついたのだろうか。

 それとも、実はそれほどケンカに嫌悪感はないとか。

 人を殺しそうなほど殴る理由が、鴇津にはわからなかった。


「すいません。ありがとうございました」


 リツはふらっと立ち上がった。

 おぼつかない足どりで、廊下を歩き出す。
 鴇津は、リツを追うことはしなかった。

 リツはひとり、階段を下りていった。





 階段をひとつ下りただけで、そこは別世界のようだった。

 おかげでリツに、まともな思考回路が戻ってくる。


 ――またやってしまった。


 リツは額を押さえた。

 昔から、キレると自分で自分を抑えられない。

 頭が真っ白になって、周りに当たり散らした。

 まるで駄々っ子だ。

 そんな自分が嫌だった。

 それでもどうしようもなくて、今のリツからは想像できないが、昔は暴力ばかり振るっていた。


 だから、怒りに支配されなくていい生き方を明日斗が教えてくれたときは、ずっとかかってた鬱陶しいモヤモヤがさっぱり晴れた。

 ラクで楽しい生き方は、自由だった。


 笑っていれば、嫌なことなど吹っ飛ぶ。
 ツラいときこそ笑え。

 どんなことでも、笑って流せるような人間になりたい。

 そうすれば、何も辛くない。

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