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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 でもやっぱり、明日斗のことになると流しきれない。

 流しきれなくて、昔のモヤモヤがやってくる。


 ――俺はどうすればいい?


 視界を邪魔する血を、リツは袖で拭った。

 それと同時に、肩が何かとぶつかった。


「あ、すいません」


 振り返りざまに謝るが、リツは相手の風貌に思わず目を止めた。


 高い背格好だが、体つきは異様なほど細い。

 顔には無数のピアスと刺青が彫られ、切れ長な目はどうも焦点があっていない。

 クスリでもやっているような、不気味な目つきだ。

 真っ黒なロン毛が、またその雰囲気を引き立たせている。


 天下の霧金とはいえ、ここまでキている奴はそういない。
 リツは思わず凝視してしまっていた。

 すると男は、にやりと口許を緩め、緩慢とした足どりで近づいてきた。

 悦に入ったような表情で、男はリツの顔を覗き込み、そっとリツの頬に手を当てた。


 リツは男の近い顔を直視するしかなかった。

 ぐいっと、親指で頬を拭われる。
 男の指には血が付着した。

 彼はそれをひと通り眺めると、再びリツの肩に手を乗せた。

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