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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

 さらに男は、リツの左腕を取る。

 左の手の甲には、誰のだかわからない血が、こびり付いている。

 それを、彼は恍惚とした顔で眺める。
 そしてちろっと舌を出すと、リツの手につく血液を舐めた。


「ちょっ!」


 手を引っ込めようとするが、左手はがっちり掴まれていた。

 さらに肩に置かれた手が後頭部に回され、思い切り引き寄せられる。


 気づくと、男の口がリツの唇に喰らいついていた。


「――ッ!」


 口の中に鉄の味が広がる。

 血を口の中に塗りたくられるように、差し込まれた男の舌がグネグネと動く。


 ――なんだこれ……。


 離れたくても、この細身からは信じられないほどの力で、がっちりと押さえつけられ、ビクともしない。

 パニクっている間にも、滑ったベロが口の中でうごめいている。

 リツは思わず、その舌に噛みついた。

 すると舌は出ていき、手も離れた。


 リツは咳き込みながら、口の中の物を吐き出した。

 口の中がねっとりしていて、気持ち悪い。


「な、ん……なに……」


 リツは口を拭いながら男を見る。
 男の視線はじっとりと、リツを舐め回していた。


「イイ……。
 お前、スゲぇイイ……」

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