血とキズナ
第3章 ノウテンキな男
男は驚くべき勢いでふっ飛んだ。
廊下を転がり、そして動かなくなる。
「お前、何やってんだよ」
男をふっ飛ばしたのはリツではなく、鴇津であった。
蹴り上げた長い足を下ろし、鴇津はリツの前で立ち止まる。
「あ。ありがとう」
鴇津は無表情にリツを見下ろした。
「立て。行くぞ」
それだけ言って、鴇津はすたすたと歩いていった。
リツはそのあとを追って、鴇津と並ぶ。
そして少し上にある鴇津の顔を、リツは見つめた。
「ったく、面倒な奴に目ぇ付けられたな」
「え?」
鴇津は前を向いたまま話し出す。
「アイツ、九鬼(クキ)。
お前、これから一人になるなよ。
即ラチられて喰われるぞ」
「俺、男なんだけど」
「関係ねえよ。
アイツは突っ込むことしか考えてねえから、穴がありゃ男も女も同じだ」
「へえ」
――正しくケダモノだな。
いや、動物だって雄同士ではないか?
リツの中では、すでに他人事だった。
「しかも血に興奮するド変態だからな。
アイツに再起不能にされた奴は、一人や二人じゃねえ」
鴇津の言葉もリツにはあまり響かず、リツはじっと鴇津の横顔を見つめていた。
廊下を転がり、そして動かなくなる。
「お前、何やってんだよ」
男をふっ飛ばしたのはリツではなく、鴇津であった。
蹴り上げた長い足を下ろし、鴇津はリツの前で立ち止まる。
「あ。ありがとう」
鴇津は無表情にリツを見下ろした。
「立て。行くぞ」
それだけ言って、鴇津はすたすたと歩いていった。
リツはそのあとを追って、鴇津と並ぶ。
そして少し上にある鴇津の顔を、リツは見つめた。
「ったく、面倒な奴に目ぇ付けられたな」
「え?」
鴇津は前を向いたまま話し出す。
「アイツ、九鬼(クキ)。
お前、これから一人になるなよ。
即ラチられて喰われるぞ」
「俺、男なんだけど」
「関係ねえよ。
アイツは突っ込むことしか考えてねえから、穴がありゃ男も女も同じだ」
「へえ」
――正しくケダモノだな。
いや、動物だって雄同士ではないか?
リツの中では、すでに他人事だった。
「しかも血に興奮するド変態だからな。
アイツに再起不能にされた奴は、一人や二人じゃねえ」
鴇津の言葉もリツにはあまり響かず、リツはじっと鴇津の横顔を見つめていた。