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血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

「だから、これからは絶対誰かと一緒に、て……なんだよ」


 鴇津がリツの視線に気づき、眉をひそめる。

 リツは言った。


「トキ先輩は、なんで俺を助けたんですか?」


 鴇津は閉口する。

 さっき屋上で話したとき、リツは鴇津に嫌われたと思っていた。
 ――というか、“どうでもいい存在”という位置に、収まったと思っていた。

 リツのことなんて、腰抜けとしか思わなかっただろう。


 どうでもいい人間を助けるような性格でもなさそうだし、リツには鴇津の行為のほうが気になった。


 しかし鴇津はその問いには答えず、逆に質問を返してきた。


「お前は、なんでアイツら殴ったんだ?」


 ギクッと、今度はリツが口ごもった。


 友達を悪く言われたからカッとなって殴りまくった――なんて、言えるわけがない。

 しかもリツはこの人の前でついさっき、“あんたに脅されたってケンカなんかしねー”みたいなセリフを吐いたばかりだ。

 ――俺、カッコワルい。

 リツがまごついているのを見て、鴇津が話し出す。


「明日斗のこと言われたのがそんなにムカついたのか?」


 全部聞かれてるし――…。

 リツはため息をついた。


「そうだよ。それだけだよ」


 それだけ。
 言葉にしてみればたったそれだけのことだ。
 大した理由じゃない。

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