テキストサイズ

血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

 



 自分の部屋のある廊下まで上がってくると、佐山は一瞬目を疑った。

 部屋の前に、東条の右腕と言われる鴇津凌一が立っていた。

 鴇津は、ツルむのを嫌う気難しい男という噂だ。

 現に佐山も、ただ一人を除いて、鴇津が誰かといるのを見たことはない。


 そんな人がなぜこんなところにいるのか、困ったことに佐山には心当たりがあった。


「リツめ。ホントにまたやらかしたな……」


 独り言ちて、佐山は自室へ歩みを進めた。


「鴇津先輩、ちわス。何やってんすか」


 佐山が話しかけた途端、鴇津の眉間にシワが寄った。


「おぉ、佐山。おかえり。早かったな」


 部屋の扉を介して、リツはジャージ姿で鴇津と話していた。
 そのリツの姿を見て、佐山はやっぱり――と肩を落とした。


「『早かったな』じゃねえよ。心配して帰ってきて見りゃ、ケガ増えてんじゃねえか。なんだよ、その頭」


 予感的中。

 というか、本当に傷が増えているとは思わなかった。

 リツならやりかねないとは思っていたものの、数時間目を離しただけで、ふつう頭に包帯するほどのケガなんてしないだろう。

 当の本人はといえば「いやぁ」と、いつもの能天気な顔を浮かべている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ