テキストサイズ

血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

「あの人が人の心配とか面倒みることなんて、かなり珍しいと思う。
 あの人、後輩どころか舎弟すら持たないし。

 ケンカだって、一人対大勢の噂しか聞いたことないし、紫鳳の抗争に加勢した話も聞かないしさ。

 あの人ほど人とツルまないのは珍しいよ。
 神出鬼没の一匹狼って言われた明日斗でさえ、中林と一緒に抗戦したっていう噂は何回か聞いたぜ」


 リツも、それは不思議に思った。

 リツが時雨で暴れたとき、紫鳳のメンバーがやられているのを、加勢するどころか、ソファから立ち上がりもせず、ただ眺めていたような人だった。

 いくらツルまない質にしたって、知っている奴がやられていたら助けようとはするだろう。

 なのに鴇津はまったくの不干渉だった。

 そんな人が、なぜ俺なんかを心配するのか。

 好かれるようなこと、何かしただろうか。

 思い返してみるが、心当たりは全くない。
 寧ろ嫌われる理由のほうがはっきりしている。


 リツは考えた。

 ということは、俺に何かあると困る事情ができたのだろうか。

 そう考えたほうが納得しやすいが、何にも縛られていない鴇津に、そんな事情あるだろうか。

 いまいちしっくりこなかった。

 そこまでリツは考えた。

 そして面倒臭くなった。

 リツはベッドの上でぐぐっと伸びた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ