テキストサイズ

血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

「お前のベッドの下に落ちてんじゃねえか! 少しは見てくれた、って……」


 鴇津の存在に気づくと、佐山は凍りつく。

 リツはニヤリと笑った。


「すいませんトキ先輩。
 俺は10分前には用意できてたんだけど、コイツがイヤーカフがねーねー騒いでたもんで」

「てめっ、リツ――」


 リツに文句を返そうとするが、佐山は鴇津の眼光に怯み、思い切り頭を下げた。


「すいません! 鴇津さんが待ってるとは、思ってなくてっ。
 知ってたらイヤーカフなんて全然――」


 佐山の全力の謝罪に、鴇津はさらに眉間のシワを増やす。


「朝からうるせえ」


 そう言って、鴇津は歩き出した。

 佐山は頭を上げ、へなへなと膝を抜かした。


「こ、殺されるかと思った……」

「んなオーバーな」


 佐山のビビり具合に、リツはご満悦だ。

 楽しそうに笑うリツを、佐山はど突く。


「お前最悪!」

「ちょっと仕返ししただけじゃん。そんな怒んなよ」


 リツも歩みを進め、鴇津の後を追う。

 そんな危機感の欠片もないリツに、佐山は最近癖になりつつあるため息をつき、リツを追った。

 ここ数日のうちに、リツのせいで急激に幸福を逃がしている気がすると、佐山はまたため息をついた。






 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ