
血とキズナ
第4章 どうでもいい奴ら
その後、鴇津とは一言もしゃべることなく校舎についた。
無言で廊下を行く鴇津だが、前を行く彼からは煙が浮いては消える。
教師ですら、校内では吸わないのに。
たまたますれ違ったその教師も、素知らぬ顔で鴇津をスルーしていく。
二年の鴇津が、当然のように一年の教室がある4階の階段を上がった。
「あれ、なんだ?」
緊張で固まっていた佐山が、久方ぶりに口を開いた。
見ると、リツたちのクラスであるC組に人集りができている。
リツは佐山と顔を見合わせるが、鴇津は一人つかつかと人集りに近づいていった。
「ひ、ひぃぃ……っ」
廊下に悲痛な声が漏れる。
窓から覗くと、机や椅子がはけられた教室の真ん中で、知った顔の男が立っていた。
忘れようにも、印象の強すぎるその風貌。
顔面刺青、顔面ピアス。
ガリガリの体躯には似つかわしくないほどの怪力で、彼はリツのクラスメートを掴み上げていた。
上半身裸のクラスメートは、髪を鷲掴みにされ、床からは数センチ浮いている。
その2人の他に教室には誰もおらず、みんな遠巻きに傍観していた。
