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血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

 九鬼は、半裸の彼を乱暴に突き放す。

 彼が軽快な足取りで近づいてくると、リツと九鬼の間の人垣はあっという間に消え、間の障害物はガラスの割れた窓枠だけとなった。


 その間に、晒し者になっていた同級生は、すばやく教室の外へと逃げた。
 賢明な判断である。

 一方九鬼の視線は、リツから決して離れない。

 九鬼の狙いは、完全にリツのほうへ移行していた。


 九鬼は窓枠を軽々と飛び越え、リツに接近する。

 しかしリツの表情はいつもと変わらない。

 隣の佐山のほうが、慌てているぐらいだ。


「よぉ、また会ったなアヤノリツ」

「どうも、朝から派手ですね」


 くくくっ――と、九鬼は楽しそうに笑い、リツにもたれ掛かる。

 正面から両腕をリツの肩に預けた。

 顔の距離が急激に接近する。


「なあ、俺の授業受けに来いよ。
 俺が開発してやるぜ……?」


 狐のような切れ長な目が、リツを舐め回すように覗く。

 しかしリツは表情一つ変えず、九鬼の腕をそっと肩から下ろした。


「なんですかそのベタなエロ小説的なセリフは」


 それだけ言って、リツは人垣を縫いながら教室へ入ろうとした。
 が、それは九鬼によって阻まれる。

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