テキストサイズ

血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

「オモシロくなってきたな。
 これからも、ヨロシク」


 そう言って、九鬼は去っていった。

 鴇津は九鬼がいなくなったことを確認すると、掴んでいたジャージの襟を離した。

 支えのなくなったリツは、すとんと尻餅をつく。

 尻をさすっていると、上から鋭い眼光が降ってきた。


「バカかお前は、むやみに近づかせやがって。
 そんなにアイツに襲われたいのか?」

「いや、そういうわけじゃないけど」


 ――けど、そこまで気を張るようなこともない気がする。

 リツは危機的状況に鈍いのか、昔からギリギリのところまでこないと本気にならない。

 現に、キスぐらい何だと思っている。

 むしろその程度のことで、鴇津がなぜ自分をここまで心配するのかがわからなかった。


 あっけらかんとしているリツに、鴇津は軽く舌を打った。


「昼、俺が来るまでどこにも行くなよ」

「え、昼も来るの?」

「…………」


 鴇津が無言で凄んでくる。
 しかし、リツにも言い分はあった。


「ていうか、あんたもアイツに目ェつけられてんじゃん。
 俺の心配してる場合じゃないんじゃねえの?」


 鴇津もリツと同様、どうも九鬼にはそういう意味で目を付けられているようだった。

 だったら立場は同じ。
 自分だけが守られる状況には納得いかなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ