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血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

 リツは、最近の昼のオトモであるタウンワークを、ベッドの上に広げた。


「決まりそう?」


 佐山も、パンをかじりながら覗いてくる。


「もう選り好みしてるヒマもないから、かたっぱしに電話してんだけどね。一向にだめ」

「なに、バイトすんの、おまえ」


 横から、ユウゴも顔をのぞかせた。

 リツは雑誌を見ながら、軽く頷く。


「ふーん、なんかほしいもんでもあんのかよ」

「いや、寮費払わないとさ」

「寮費? 自分で払うのか」

「うん、まあ」


 ユウゴが、ふうんと低くうなる。


「なんだよ」

「べっつにぃ」


 またユウゴの機嫌が斜めになったが、リツはタウンワークに目を戻した。

 小さくなったハムサンドをくわえなおす。

 すると、それを合図にしたように、保健室の扉が勢いよく開いた。


「オォ、いたいた」


 立っていたのは、長身だが猫背の男。

 顔の刺青が怪しげに歪む。

 九鬼の出現に、ユウゴと佐山の顔は引きつった。

 リツは、ハムサンドをくわえながら、なにくわぬ顔で九鬼を見ている。


「なっ、なんで九鬼がくんだよ」


 ユウゴは、リツを守れと言われただけだった。
 思い返せば、誰から守ればいいのか、知らなかったのだ。

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