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血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

 周りの混乱をよそに、その中心であるリツの心中は、安穏そのものであった。

 そんなノンキ丸出しの表情を、リツは鏡ごしに見られていることに気づく。


「うわっ! ビックリした、いるなら声かけてよ」


 俺の周りには、神出鬼没な輩が多い気がする。

 いつもの仏頂面で壁にもたれ掛かっていた鴇津は、音もなくリツの背後をとっていた。

 しかしなにを言うでもなく、鴇津はただじっとリツの顔を見つめるだけだった。
 鴇津の無情な視線を受け続けるのは、居心地が悪い。


「なんだよ」


 そう言うと、やっと鴇津の口が動き出した。


「寮費、自分で払うのか」

「ん? まあ」


 リツは訝しげに振り返り、鴇津と向かい合う。


「お前、柏木中だろ。なんでわざわざ寮に入った。
 柏木の学区だったら、チャリでだって来れるだろ」

「引っ越したんだ、それでちょっと遠くなった。
 つっても、電車で30分くらいだけど」

「じゃあ、電車代のほうが安いだろ」

「うん、まあそうだけど、家には、居づらいからさ」


 リツはすっと視線を流した。
 その様子を、鴇津はじっと見つめる。


「もしバイト決まらなかったら、どうするつもりだ?」

「決めるよ。いまさら帰れないし」

「――そうか」

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