テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

  花びら占い

 一枚、また一枚と深紅の花びらが風に舞い、いずこへと運ばれてゆく。
 キョンシルは先刻からもうずっと、同じことを繰り返していた。彼女の手には一輪の椿が握りしめられている。既に花冠に残っている花びらは数枚になっていた。無残といえば、無残な有様ではある。
「結婚する」
 キョンシルが呟き、花びらをむしる。
「結婚しない」
 また一枚、残ったわずかな花びらをむしった。
 今日の都は殊の外、風が強かった。空も今にも雪でも降りそうな曇天がひろがっている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ