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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

 男は一瞬、顔を伏せた。その直前、整った面に薄笑いが―人を見下したような嫌な笑い方だ―よぎったように見えたのは気のせいだろうか。
「はい、お察しのとおり、崔家の旦那さまがまた発作を起こされ、兄はお側につきっきりでおります」
 つまり、馬執事が側を離れられないほど、祖父の状態は深刻なのだろう。
 キョンシルはすっかり動転して、冷静な判断能力を完全に失っていた。
 男はキョンシルに考える時間を与えまいとでもするかのように急かした。
「こうしてはおられません。お嬢さま、旦那さまはお嬢さまのお越しを今か今かとお待ちでございます。どうぞ一刻も早くお屋敷の方へおいで下さいまし」

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