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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

 深く考えもせず、キョンシルは頷いた。
「判ったわ。すぐに行きます」
 馬執事の弟が顎をしゃくると、付き従ってきた下男らしい男が扉を開けた。
「さ、どうぞお乗り下さい」
 キョンシルは疑うこともなく輿の中の人となった。
「出立!」
 先刻の男の声が聞こえ、輿が動き始める。キョンシルの乗った輿は嵐と見紛うほどの風の中を進んだ。
 キョンシルは輿の中で嫌な予感におののいていた。祖父は今、どんな様子なのだろう。卒中は二度目の発作がいちばん危険だといわれている。一度目は助かる人は多いけれど、再発すれば、大抵の人は生命を落とすと聞いた。

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