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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

 冗談ではないと思った。あんな蛙と猿の出来損ないのような男、指一本でも触れられたくない。どうすれば、この極限状態を打破できるのか?
 キョンシルは改めて周囲を見回す。閉じ込められている場所は、これも当然というべきか、納屋のような狭い空間だ。キョンシルの推測は間違ってはいないらしく、小屋内の壁には、ついぞ使ってはいないと思われる鋤や鍬などが乱雑に立てかけられ、片隅には蜘蛛の巣の張った笊や石臼が転がっていた。
 視線を上に動かすと、明かり取りの小窓が最上部に見える。あれだけ吹き荒れていた風嵐は嘘のように止んでいた。蜜色の夕陽がその小さな窓から差し込んでいるのを見ると、夕刻なのだろう。

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