
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い
馬執事の弟だという男が現れたのは昼過ぎだから、数時間もの間、ここで眠らされていたことになる。恐らく、あれは何かの薬に相違ない。嗅いだら最後、意識が混濁して気を失ってしまうという空恐ろしい代物だ。
キョンシルは唇を噛んだ。何故、あの時―馬執事の弟だと男が名乗った時、おかしいと思わなかったのか。
三日前、馬執事が祖父を見舞っての帰り道に家まで送ってくれた時、言っていたはずではないか。
―私は父が四十を過ぎた頃にやっと恵まれた一人息子でして―。
あの日、馬執事は一人息子だとはっきりと語ったのに、弟がいるはずがない。もっと早くに気づいていれば、ここまで事態を悪化させることはなかったはずだ。
キョンシルは唇を噛んだ。何故、あの時―馬執事の弟だと男が名乗った時、おかしいと思わなかったのか。
三日前、馬執事が祖父を見舞っての帰り道に家まで送ってくれた時、言っていたはずではないか。
―私は父が四十を過ぎた頃にやっと恵まれた一人息子でして―。
あの日、馬執事は一人息子だとはっきりと語ったのに、弟がいるはずがない。もっと早くに気づいていれば、ここまで事態を悪化させることはなかったはずだ。
