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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

―私ったら、本当に愚かだわ。
 絶望と後悔に苛まれ、キョンシルは泣きたくなった。と、突然、納屋の扉が軋みながら開いた。
 咄嗟にまだ意識を失っているふりをしようかとも考えたが―、ある考えが閃いた。
 眼を一杯に見開き、できるだけ怯え動揺しているように見せる。
「何だ、流石にもう目覚めてたのか」
 どうやら声からして先刻の男たちの一人らしい。二人ならば厄介なところだったが、天はまだ自分を見放してはいなかったようだ。
 男がすぐに猿轡を外したのはもっけの幸いだった。
 キョンシルはまだ床に転がったままだったので、咄嗟に薄汚れた床に顔を押しつけた。

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