
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い
キョンシルはそっとトスの様子を窺い見た。トスは常になく緊張しきった面持ちで、キョンシルの傍らに端座している。
トスとキョンシルは今、崔家の客室に案内されていた。かれこれもう四半刻余りは待たされているが、トスはその間、ひと言も発そうとはせず、ひたすら前方を挑むような眼で見据えている。
キョンシルは崔ミンチュの屋敷から助け出された後、トスから事の顛末を聞いた。
あの日―キョンシルが馬執事の弟だと名乗る若い男に連れ出された日、トスは夕刻になって勤め先の絹店から帰宅した。
冬の陽が落ちるのは早い。いつもなら家から明かりが洩れているのに、その日に限って真っ暗だった。訝しく思いながら家の中に入っても、やはり誰もいない。
トスとキョンシルは今、崔家の客室に案内されていた。かれこれもう四半刻余りは待たされているが、トスはその間、ひと言も発そうとはせず、ひたすら前方を挑むような眼で見据えている。
キョンシルは崔ミンチュの屋敷から助け出された後、トスから事の顛末を聞いた。
あの日―キョンシルが馬執事の弟だと名乗る若い男に連れ出された日、トスは夕刻になって勤め先の絹店から帰宅した。
冬の陽が落ちるのは早い。いつもなら家から明かりが洩れているのに、その日に限って真っ暗だった。訝しく思いながら家の中に入っても、やはり誰もいない。
