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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

私自身、たいした家柄ではありませんが、両班として生まれました。さりながら、自分が両班で良かったと思ったことは一度たりともありません」
「それは至極残念なことだ。君のような男にこそ、この国の未来を担っていって欲しいと儂は思うが」
 トスは、きっぱりと首を振った。
「私は官僚になるつもりも、崔氏の婿になるつもりも一切ないのです」
 そのひと言に、キョンシルは絶望のどん底に突き落とされた想いだった。怖れていたことが現実になってしまった―。やはり、トスは自由を棄ててまで、キョンシルと生きる道を選んではくれなかった。
 失望で、眼尻に涙が滲む。

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