テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第20章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 花びら占い

「彼女を攫って遠くに行きます」
 短い沈黙があった。針で突けば割れそうな静寂を破ったのは意外にもイルチェの笑声であった。
 イルチェは笑いながら言った。
「そうか。もし儂が認めずとも、キョンシルを攫って逃げるか。こいつは良い」
 祖父はひとしきり笑った後、笑いをおさめた。
「朴トスといったな。儂は君のような男に出逢えるのを長年待っていたよ。君はすべてにおいて、私の望んだとおりの応えを導き出した。即ち、一つ目の問いには躊躇いもなくキョンシルが欲しいと言い、二つ目の応えは判らないとさりげなく交わした。その上で、儂の出す条件を呑まねばキョンシルはやらぬと言えば、今度は無理にでも奪い取ると言った!

ストーリーメニュー

TOPTOPへ