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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

 しかし、人間とは判らないものだ。キョンシルだって、下町生まれの下町育ちで、絹の服など袖を通したこともない。そんな自分が上流両班の娘だというのだ! トスがどこかの両班の子息だとしてもおかしくはない―、いや、そんなこと、あり得ない。
 キョンシルは陸(おか)に上がったばかりの犬のように勢いよく首を振った。
 馬鹿げている。トスが両班の子息であるはずがないし、第一、キョンシルも崔氏の娘かどうかは知らないが、そんなごたいそうな家と関わり合いになるつもりはない。
「それで? そなたが崔イルチェどのの孫だという証は、この首飾りだけなのか?」
「ううん」
 キョンシルは再び袖をまさぐった。今度は少し手間取って、やっと父の書いたという書き付けが出てきた。

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