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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

「これを見て」
 トスは小さな紙片をひろげ、食い入るように眺めた。また気詰まりな沈黙がひろがる。
「確かに、この書き付けは崔チソンどのの書いたものだ。印まで捺してあれば、十得分通用するだろう。亡くなられたそなたの父上は、そなたのことをとても大切に思っていたのであろうよ。これだけ証拠が揃えば、間違いないな。キョンシルは紛れもなく崔氏の息女だ」
 その沈黙はトスの嘆息とともに破られた。
 トスは参ったとでも言いたげに、首を振った。
「そなたは祖父の許に行かなくて良いのか?」
 改めて問われ、キョンシルは眼をまたたかせた。
「何で? どうして、そんなことを訊くの?」

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