側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
キョンシルは緩く首を振り、自分もトスに倣って眼前にひろがる光景を見つめた。
既に都を出て一刻余り。だが、ここは郊外とはいっても、まだ引き返そうと思えば容易に引き返せる場所ではある。
今、トスとキョンシルが並んで見下ろすはるか下方にひろがる街こそが首都漢陽であった。こうしてはるか高みから眺めると、大きな都がまるで作り物めいた玩具の街のように見える。
あの街に何千、何万、いやそれ以上の数え切れないほどの家がひしめいている。ここからでは指先ほどの大きさにも満たないほど小さく見える家々に、また、人が住んでいて、それぞれの生がある。
あの小さな家一つ一つに人間が日々紡いでゆく営みがあるのかと思うと、厳粛な気持ちになると共に切ないような、愛おしいような気持ちになった。
既に都を出て一刻余り。だが、ここは郊外とはいっても、まだ引き返そうと思えば容易に引き返せる場所ではある。
今、トスとキョンシルが並んで見下ろすはるか下方にひろがる街こそが首都漢陽であった。こうしてはるか高みから眺めると、大きな都がまるで作り物めいた玩具の街のように見える。
あの街に何千、何万、いやそれ以上の数え切れないほどの家がひしめいている。ここからでは指先ほどの大きさにも満たないほど小さく見える家々に、また、人が住んでいて、それぞれの生がある。
あの小さな家一つ一つに人間が日々紡いでゆく営みがあるのかと思うと、厳粛な気持ちになると共に切ないような、愛おしいような気持ちになった。