側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
人間は何とちっぽけなのだろう。
人間は何と逞しく強い生き物なのだろう。
あの家並みのどこかに、キョンシルが生まれ育った懐かしい家があるのだ。
「―本当に良いのか?」
唐突に問われ、キョンシルは眼を見開いた。
「何が?」
「都を離れて心残りはないのかと訊いている」
トスはまだ下方にひろがる漢陽の街を眺めている。
キョンシルは笑った。
「トスおじさんも案外、しつこいのね。何度、同じことを言わせれば気が済むの?」
トスが初めて振り向き、キョンシルを見た。
「都で生まれ育った人間が都を離れて生きてゆくというのは、そなたが考えているほど甘くはない。俺は都生まれではないゆえ、さほど執着はないが、キョンシルは生粋の漢陽育ちだろう」
人間は何と逞しく強い生き物なのだろう。
あの家並みのどこかに、キョンシルが生まれ育った懐かしい家があるのだ。
「―本当に良いのか?」
唐突に問われ、キョンシルは眼を見開いた。
「何が?」
「都を離れて心残りはないのかと訊いている」
トスはまだ下方にひろがる漢陽の街を眺めている。
キョンシルは笑った。
「トスおじさんも案外、しつこいのね。何度、同じことを言わせれば気が済むの?」
トスが初めて振り向き、キョンシルを見た。
「都で生まれ育った人間が都を離れて生きてゆくというのは、そなたが考えているほど甘くはない。俺は都生まれではないゆえ、さほど執着はないが、キョンシルは生粋の漢陽育ちだろう」