側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
「別におじさんが心配するほどの未練はないわよ。両班のお嬢さまでもあるまいし、庶民はしたたかで図太いんだから。庭で大切に育てられた花は外に出すとすぐに枯れちゃうけれど、雑草はどこでだって根付いて生きてゆけるのよ」
「そう、か」
トスは頷くと、立ち上がった。二人は手近な石に腰掛けていた。都を出て一刻以上も休みなく歩いてきたので、ここらで休憩しようとトスが言い出したのである。
この辺りは既に民家らしい民家は見当たらない。今、二人がいる場所は小高い丘の上で、ここから道は緩やかな弧を描いて下り坂になる。都内はまだ整備された比較的広い道が続いていたが、この道は荷車がようやっと一台通れる広さしかない。
「そう、か」
トスは頷くと、立ち上がった。二人は手近な石に腰掛けていた。都を出て一刻以上も休みなく歩いてきたので、ここらで休憩しようとトスが言い出したのである。
この辺りは既に民家らしい民家は見当たらない。今、二人がいる場所は小高い丘の上で、ここから道は緩やかな弧を描いて下り坂になる。都内はまだ整備された比較的広い道が続いていたが、この道は荷車がようやっと一台通れる広さしかない。