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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 そこで、彼は初めて自分が十五歳の少女にまんまとやり返されたことに気づく。
「くそっ」
 トスは彼らしくもない悪態をつき、プイと横を向いた。しばらく口をきいてやるものかと唇を引き結んでひたすら歩いていると、ふいに上衣の裾がむんずと引っ張られた。
 そのまま歩いていては、服が破れてしまう。トスは仕方なく立ち止まった。
「どうした」
 まだ怒っているのだと示すために、わざと横柄な口調で言った。
 キョンシルは伸び上がって、トスの貌を見上げた。キョンシルは少女にしては大柄な方ではあるが、並の男よりはるかに上背のあるトスと並べば、どうしてもかなり目線が低くなる。

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