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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

「正体不明で神出鬼没ねえ。一体、そなたは俺を何者だと思ってるのか」
 トスは首を傾げながら、嘆息している。
「それにしても、今時の若い奴は随分と言いたい放題なものだ。年上に対する物言いとか礼儀とかをわきまえちゃいないのか?」
 キョンシルが笑いながら言った。
「何よ、年寄りじみたこと言って。おじさんもまだ十分若いでしょ」
「十五のそなたから見れば、俺は十分すぎるくらい歳取ってるよ」
 トスは何気なく放った言葉だろうが、その科白はキョンシルの心を深く刺し貫いた。やはり、トスにとって自分は恋愛対象にも入らない子どもなのだと再確認してしまった。

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