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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 トスは陽に灼けた貌をほころばせる。
「なに、一夜くらいは構わないさ。人間困ったときは相身互いだ」
 などと、都合の良いことを言って、早くもどっかりと腰を下ろして寛いでいる。
「やっぱり、この人、かなり良い加減。それに、かなり厚かましいみたい」
「ん? 何か言ったか?」
 わざと聞こえるように言ったので、聞こえていたはずだ。なのに、トスは耳に手を当てて訊き返してきた。
 キョンシルは呆れたように肩をすくめ、自分も仕方なしに座った。
「どうして、ここに泊まる気になったの?」
 どうしても納得できなくて問うと、トスは笑う。
「これから先は長い。あまりに急いで疲れる必要もないからな」
「それはそうだけど」

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