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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 身なりに構わない彼の様子から、およそそういったことには無頓着、行き当たりばったりなのかと思い込んでいたが、どうやらトスは随分と慎重というか用意周到らしい。
「今が春で良かった。この隙間だらけの小屋で真冬の夜を過ごすのは大変だっただろう」
 トスがふと呟き、キョンシルを見た。
 キョンシルは膝を抱え、身体を丸めるような格好で座っている。なるべくトスの方は見ないようにしていた。
 まだ都を出て一日しか経っていない。しかし、そのわずかな間で、キョンシルはトスについてこれまで知らなかった面を幾つも垣間見た。中でも最も衝撃的だったのは、昼間、彼が突如として欲望を剥き出しにしてキョンシルに襲いかかってきたことである。

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