
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
既に食事は済んでいる。トスが持参した兎肉の燻製を薄く切ったものとキョンシルが朝、握ってきたお握りで簡単に済ませた。
昼間の出来事以来、トスとは必要以上に近づくまいとしているキョンシルであったが、いつしか小刀を巧みに動かしている彼の手つきに見入っていた。
いかほどの刻が経ったのか。多分、ものの四半刻ほどのものだっただろう。トスはついに小刀を動かす手を止め、会心の笑みを浮かべた。人形の表面についた木屑を息を吹きかけて落とし、眼の前にかざして用心深く色々な角度から仕上がりを確認している。
「キョンシル」
「トスおじさん」
二人がほぼ同時に口を開き、また同じように口を閉じた。
昼間の出来事以来、トスとは必要以上に近づくまいとしているキョンシルであったが、いつしか小刀を巧みに動かしている彼の手つきに見入っていた。
いかほどの刻が経ったのか。多分、ものの四半刻ほどのものだっただろう。トスはついに小刀を動かす手を止め、会心の笑みを浮かべた。人形の表面についた木屑を息を吹きかけて落とし、眼の前にかざして用心深く色々な角度から仕上がりを確認している。
「キョンシル」
「トスおじさん」
二人がほぼ同時に口を開き、また同じように口を閉じた。
