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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

「どうした?」
「ううん、おじさんの方からどうぞ」
 二人は何度か譲り合い、結局、トスから話すことになった。
「これをそなたにやる」
 えっ、と、キョンシルは愕きを隠せずトスを見つめた。
 トスのややつり上がった瞳には意外にも懇願するような色が浮かんでいた。
「そなたには、これをずっと持っていて欲しい」
 もう一度言われ、キョンシルはトスの差し出した人形を受け取った。
「これって、仏さまなの?」
 掌の上の小さな仏像は、観音像に見える。
 ふっと、キョンシルは笑んだ。
「俺が仏像なんて拵えたら、おかしいか?」

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