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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第2章 哀しみはある日、突然に

 母の口利きで、トスは母と取引のある絹店で働くことになった。むろん、剣で生きてきたという男が今更、商人になれるはずもない。
 その店の主人はけして悪い男ではなかったが、商いのためには冷酷にもなれる筋金入りの商人であった。ゆえに、他人から恨みを買うこともしばしばであり、トスはその主人の用心棒として雇われたのである。住まいもその商人の構える広壮な屋敷の一角に与えられることになった。
 そうしてめぐり逢った二人が恋に落ちるのは時間の問題であったろう。月日はめぐり、トスとミヨンは大人同士の恋をゆっくりとはぐくみ、キョンシルは十一歳から十五歳になった。

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