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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

「おじさん」
 熱い塊がせり上げてきて、もう何も言えない。キョンシルは涙の滲んだ瞳でトスを見つめた。
「トスおじさんもお母さんも同じことを言うのね」
 やはり二人は似た者同士だったのかもしれない。ミヨンが元気でいたら、さぞかしお似合いの夫婦になっていたことだろう。
 図らずも母は自分が着るはずだった婚礼衣装を、トスは母に結婚の記念として贈るはずだった簪を、残れされたキョンシルに受け継いで持っていて欲しいと言う。
 その二人の真心と想いに、胸が一杯になる。しかし、トスは十一歳のときからずっと心でひそかに想い続けてきた男であった。その男から、他の誰かと幸せになってくれと真顔で囁かれるのは複雑な心境でもあった。

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