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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 ふいに、キョンシルの中である一つの想いが湧き上がった。トスは母とも〝あんなこと〟をしていたのだろうか。昼間、キョンシルを押し倒し覆い被さってきた彼は荒々しく彼女の膚をまさぐり、狂おしく口づけた。
 既に二人の口づけは見ているが、大人の二人、しかも長いつきあいだったのだ。トスは遊びにきて夕飯を一緒に囲むことはあっても、泊まったことはなかった。しかし、キョンシルが遊びに出かけていた最中、時間は幾らでもあった。
 一糸まとわぬ母の裸身を背後からそっと抱きしめ、乱れた髪を愛おしげに撫で簪を挿してやるトス。ろくに閨の知識もないのに、あたかもその映像だけが鮮烈に焼きついたように脳裏から消えない。
「よし、これで良い」
 トスは簪を挿したキョンシルを満足そうに眺めている。

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