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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 何度か繰り返すと、小さくなっていた焔は直に勢いを取り戻し赤々と燃え始めた。時折、銀色の火の粉が宙を舞い、パチパチと薪が爆ぜる。
「寒くはないか?」
 トスに気遣うように問われ、キョンシルは頷いた。
「私なら大丈夫だから、心配しないで。トスおじさんの方こそ、大丈夫?」
 逆に心配されたトスは照れくさそうに頷く。
「ああ、いつかのそなたの科白ではないが、俺はガキの時分から丈夫なのだけが取り柄だからな。それに、馬鹿は風邪引かないって昔から言うだろ」
「ふふっ、いかにもトスおじさんらしい科白ね」

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