
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
今度は、キョンシルが慌てて話を変える番になった。
「都を出てどこか行きたいところはなかったの? 住んでみたいところとか」
トスはゆっくりと首をめぐらせた。
彼はしばらく虚ろな眼で虚空を睨み据えていた。長い沈黙が続いた後で、故意に落とし物をするような口調でポツリと言った。
「ここではないどこかなら、どこでも良かった」
「ここではないどこか? それは、漢陽じゃなければ、別にどこの土地でも構わないって意味?」
「まあ、そういうことになるな」
トスは理由は言わなかったし、キョンシルも問わなかった。その応えは、先刻の都を離れたかった理由と同じになるからだ。訊かなくても、判る。トスが漢陽の土地を離れたがったのは、ミヨンとの想い出がたくさんあるから。
「都を出てどこか行きたいところはなかったの? 住んでみたいところとか」
トスはゆっくりと首をめぐらせた。
彼はしばらく虚ろな眼で虚空を睨み据えていた。長い沈黙が続いた後で、故意に落とし物をするような口調でポツリと言った。
「ここではないどこかなら、どこでも良かった」
「ここではないどこか? それは、漢陽じゃなければ、別にどこの土地でも構わないって意味?」
「まあ、そういうことになるな」
トスは理由は言わなかったし、キョンシルも問わなかった。その応えは、先刻の都を離れたかった理由と同じになるからだ。訊かなくても、判る。トスが漢陽の土地を離れたがったのは、ミヨンとの想い出がたくさんあるから。
