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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

 キョンシルの脳裏に一つの光景が浮かび上がる。海の近くに位置する地方のとある町。家の中にいても、海鳴りの響きがかすかに聞こえ、潮騒がかすかに香ってくるような、町。
「もしかしたら、家の中にいても、海鳴りが聞こえてくるのかしら」
 無意識の中に口すると、トスが心底愕いたように見ていた。
「何だ、キョンシルは俺の生まれた町に来たことがあるのか」
「まさか。さっきも言ったでしょう。私は生まれてからこのかた、海を見たことはないの」
 トスは笑って頷く。
「そうだな、そうだったよな。だが、そなたの言ったとおりだ。むろん、家の場所にもよるだろうが、海から近い家々では屋内にいても、海鳴りの音がかすかに聞こえてくる。

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