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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第4章 偽りの別れ

「割と温暖な気候に恵まれているんだよ。海沿いだが、温かい水が流れ込んでくるんでね。キョンシルが生まれ育った都よりは、よほど温かい」
「じゃあ、雪は降らないの?」
「全く降らないということはないけれど、漢陽のようにはゆかないだろう。元々が温かい土地だから。さもなければ、トウモロコシは育たないよ」
「あら、でも、この小屋の回りはトウモロコシだらけよ」
 キョンシルが不思議そうに訴える。ここはまだ都を出たばかりのところで、都と季候は殆ど変わらない。かえって平地ではないため、都より気温が低いかもしれない。
 トスは笑いながらキョンシルの髪を撫でた。

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