
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第4章 偽りの別れ
キョンシルの方が切なくなるような哀しげな声だった。
ミヨンの死はいまだにトスの心に大きな翳りを落としている。そして、それだけ彼の心を母は独占しているのだ。改めてトスの母への想いを感じた一瞬であった。
トスが重くなった空気を変えるように話題を戻した。
「まっ、雪の降らない代わりと言っては何だが、町には浜木綿(はまゆう)が咲くんだ」
「はまゆう―」
「そう、それこそ真っ白な雪みたいな色をした花だよ。浜辺に一杯群れて咲いているところは、なかなかのものだ」
「素敵、見てみたいわ」
キョンシルはうっとりと夢見るような瞳で呟いた。家の中にいても潮騒が聞こえる町、はまゆうが群れ咲くという海岸。まるで夢の中の光景のように思えた。
ミヨンの死はいまだにトスの心に大きな翳りを落としている。そして、それだけ彼の心を母は独占しているのだ。改めてトスの母への想いを感じた一瞬であった。
トスが重くなった空気を変えるように話題を戻した。
「まっ、雪の降らない代わりと言っては何だが、町には浜木綿(はまゆう)が咲くんだ」
「はまゆう―」
「そう、それこそ真っ白な雪みたいな色をした花だよ。浜辺に一杯群れて咲いているところは、なかなかのものだ」
「素敵、見てみたいわ」
キョンシルはうっとりと夢見るような瞳で呟いた。家の中にいても潮騒が聞こえる町、はまゆうが群れ咲くという海岸。まるで夢の中の光景のように思えた。
